混じり合わない気質(2)
8月からものすごく間延びしながら書き続けてきた四大気質の記事も今回で終わりにしようと思っています。
読んでくださる方は「もっと早く書けよ」と思っていらっしゃるかも知れません。
でも一応、この「のろのろペース」も私の作戦なのです。
さて、四大気質について解説するにあたり、私はずっとゲーテの気質表を参考に話を進めています。
人によっては異論があるかもしれません。
でも、このゲーテの気質表、見れば見るほど「よくできている」と思えてきます。
ただ、この表を読む場合、少し気をつけるべき点があります。
それは言葉の裏側を読む、ということです。
たとえば胆汁質のところに冒険家という言葉が書かれています。
そこで、「冒険家って誰がいたっけ?」と個々の冒険家を思い浮かべても意味がありません。
それよりも、冒険家という言葉が暗示する「意味」を考えるべきです。
たとえば秘境に行く人だけを冒険家だとは考えないこと。
どんな職業についていても、リスクを冒して前例のないやり方をする人がいれば、そういう人もやはり冒険家と呼べるでしょう。
次にその冒険家の正面を見ると、そこには教師と書かれています。
この教師をいうのも、別に教職免許をとって学校で生徒を教えている人だけを指すとは限りません。
ここでいう教師とは、おそらく「定まったカリキュラムのもと、先人が残した教えを次世代にそのまま伝えることに心血を注ぐ人」と解釈するべきです。
そのように考えると、冒険家と教師とが対比関係になっている理由がわかると思います。
そして、その冒険家と教師の関係性をグレードアップしたのが勇士と歴史家だと考えられます。
ゲーテがこの対比を考えついた時、恐らく彼はプルタルコスの『英雄伝』などを思い浮かべていたのでしょう。
つまり未来を切り拓く勇士がいて、その活躍を書き留める歴史家がいる。
プルタルコスは歴史書を書いたつもりではなかったようだけど、時代が経ってみると彼の本は第一級の歴史書として扱われるようになりました。
では、君主と詩人という対比はいったいどこから来ているのでしょうか。
ゲーテ自身、詩人でもありました。
でもおそらくゲーテは自分自身ではなく、友人のシラーを思い浮かべていたと思います。
というか、そもそもこの気質表自体、ゲーテとシラーとの合作だという話もありますから・・・。
ついでにシラーの話をしておくと・・・
シラーという詩人と日本との接点としては、年末恒例の合唱付き交響曲『第九』の歌詞を書いた人と言えば思い出していただけるかもしれません。
このシラーは反権力系の作品を書いていた詩人でした。
そこでゲーテは君主とは正反対の存在といえばどんな人だろうかと考えた時、まっさきに友人で詩人のシラーを思い出したのでしょう。
そしてその隣の暴君と演説者。
この対比だけはちょっと特殊な組み合わせだと思います。
なぜなら他の組み合わせとは違い、対比関係にありながら両方をこなしてしまう人がいるからです。
そういう意味で真っ先に思い浮かべるのがヒトラーです。
この独裁者の場合、まさに暴君であると同時にデマゴーグとしての演説家でもありました。
そして、その対比を上手に使って作られた映画がチャップリンの『独裁者』です。
さて、最後は急ぎ足となりましたが、これでゲーテの気質表の各項目について、ぐるっと1周、すべて触れることができました。
実際のところ、シラーやヒトラーの出生図のアセンダントが何かなんて知りません。
でも、一応「考え方」ということで説明をしたつもりです。
最後に四体液説と四大気質について、少しまとめておきたいと思います。
私は前にも書いたように、
「古典占星術で人間心理を扱うなら、ユングではなく四体液説を使いたい」
と考えています
でも、それでもって実際の占い現場で心理カウンセリングのようなことをすべしとは考えていません。
人の心を扱うことは専門家にとっても難しいものです。
ましてや専門「外」の占い師がクライアントのメンタルな問題にまで踏み込むのは危険です。
でも、だからと言って「占い師は心理学に興味を持つことさえダメだ」と考えるのは変です。
それは偏狭な考え方だと思います。
クライアントの前では口には出さなくても、人を相手にする仕事なら一応、人間心理について考えることができる素養も必要だと考えています。
そのためには何らかの判断基準というか、思考のためのフレームを持っていた方が有利です。
そこでお勧めするのが四体液説なのです。
フロイトやユングの理論を学ぼうと思っても、多く人は難しすぎて中途半端なところで終わってしまうでしょう。
だからもし心理的な要素も占星術に取り入れるなら、もう少し取っつきやすい四体液説をフレームワークとして活用する方が現実的です。
実際、こちらは古典占星術とも非常に相性がいいです。
また、西洋古典の中核にある四体液説なのに、それを古典占星術の中で使っている人はおそらくほとんどいません。
ということは、もし今始めるなら草分けになれるということです。
そういう意味でも四体液説は研究してみる価値があります。
占星術とからめた参考文献はほとんどありませんが、とりあえず基礎を学ぶなら私が書いたこちらの本がおすすめです。
それではまた。